サブタイトルに「おかあさんと子どものあそびうた」とあるように、手遊びや身体を使った遊びのためのわらべうたから、代表的なものを15曲集めて紹介しています。わらべうたを知らない世代も増えているようですが、幼い子どもたちが喜ぶコミュニケーションツールとして見直されています。子どもとコミュニケーションを取る上で重要な要点は、スキンシップ、アイコンタクト、肉声でしょう。遊びの要素を含んだわらべうたには、これらの要点が存分に備わっているのです。
15曲の内、ご存知のわらべうたもあると思いますが、知っているものと少し違う場合もあるかもしれません。わらべうたは、元々口承伝承によって、現在に伝えられたものです。その土地その土地で伝わったものもあれば、違う土地に渡って変化していったものもあります。違っていても当然と言えば当然なのです。わらべうたには、作詞家も作曲家も特定されていないのですから。参考楽譜集が付いていますが、あくまでも参考です。もちろん初めて知る歌は、参考にしてください。正しくではなく、楽しく歌うことを心掛けたいですね。
絵を担当しているのは、わらべうた絵本を多く手掛ける真島節子さんです。真島さんは、地色を染めた和紙の上に、着物の生地を染めるための型で模様を描いて、それを切って貼るという、和紙の型染めや切り絵の手法を使って作品を制作しています。その技法が、古くからの伝承である日本的な雰囲気を、和風モダンの形で醸し出しているのでしょう。わらべうたの遊び方を、丁寧に描いて説明してくれています。
子どもたちはわらべうたが大好きです。この絵本をきっかけに、子どもにいっぱい歌ってあげて、一緒に遊んでください。笑い声が絶えないと思いますよ。
文 吉井康文