「コッコさんシリーズ」全7冊ある中で、最初に出版された絵本です。1982年に月刊誌「年少版こどものとも」の9月号として登場しましたが、翌年の1983年に「だーれもいない だーれもいない」、続いて1984年「コッコさんのともだち」と3年連続で月刊誌で発表されます。このことは、いかにコッコさんが、この1作目が、幼い子どもたちの心を捉えたかを物語っているでしょう。
作者の片山健さんは、詩人の片山令子さんとのコンビでも数冊の絵本を出版されていますが、コッコさんは、このご夫婦のお子さんとの体験が、ヒントになっていると言われています。表紙でコッコさんが読んでいる絵本は、世界でも愛され続けているチェコの「りんごのき」(エドアルド・ペチシカ文 ヘレナ・ズマトリーコバー絵 内田莉莎子訳 福音館書店 1972)です。あとでもう一度、おにいちゃんの枕元にも描かれています。おそらくお子さんたちが、好きな絵本だったのではないでしょうか。
表紙から裏表紙までブルー系統で統一されています。見返しは暗い青一色で、奥付の著者紹介なども見づらいほどです。この統一感が、眠りの世界に誘っているのかもしれません。
お月さま以外のあらゆるものが眠りについた夜に、コッコさんだけが目を覚ましています。お月さまが繰り返し眠るように促しますが、コッコさんはがんばります。この辺りは、子どもの心理に寄り添い、子どもの内面を深く掘り下げる著者の真骨頂だと言えるでしょう。寝る前に読んであげたい一冊です。この絵本ではわかりませんが、二頭身のコッコさんは、このあとも愛くるしい姿で大活躍します。シリーズを通してお楽しみください。
文 吉井康文