「かず」の絵本は、数多く出版されています。そのうち数字を覚えるためのお勉強的な絵本が多数を占めていることも事実です。しかしこの絵本は、一風変わっています。
まず表紙。絵本には珍しく、バックの色が紫一色です。そして帽子をかぶったフクロウが枝の上の左側に大きく描かれ、正面をまっすぐに見つめています。枝の真ん中に白抜きの1の数字が目立つように置かれています。表紙の絵は、裏表紙にも繋がっていて、枝の端に白抜きの1よりも大きなオレンジ色の1が置かれ、パジャマを着た主人公の子どもがフクロウとお揃いの帽子をかぶり、オレンジの1に片手でつかまるように立っています。この子どもは男の子か女の子かはわかりません。まさに夜のイメージで、フクロウと目が合うことによって、今にも絵本の世界に引き込まれそうです。
これも珍しいのですが、表紙をめくり、扉と呼ばれる見開きの左ページにタイトルが書かれています。右ページには、ベッドの上からこちらを見つめる主人公が描かれ、絵だけの世界が始まります。最初は、表紙と裏表紙の絵が再現されていますが、白抜きの1はなく、オレンジの1だけです。次からの見開きは、順番に数字が一つ大きく描かれ、その数字にふさわしい絵と主人公の子どもが登場します。文字は一つも出てきません。それが11まで続くのですが、子どもの帽子の形とパジャマの色は毎回異なっています。絵はいくらでも読めるのです。最後は、ベッドの中で眠る主人公が描かれ、1~11‚‥‥の数字が。まるで絵本の世界から眠りの世界に誘われているようです。
1971年に発表されてから、海外7ヶ国でも出版され、50年近くも世界中の子どもたちに愛され続けている絵本なのです。
文 吉井康文