なんともインパクトのある表紙が、目を引き付けます。おひさまに顔が描かれ、ピッカピカに光輝きながら、豪快に口を大きく開けて、大笑いしているのですから。「あはは」というより「わっはっは」という笑い声が聞こえてきそうです。
ページをめくっていきましょう。安心してください。最初の「おひさまがあはは」のおひさまは、やさしそうな満面の笑みです。次の「おおきなきがあはは」では、木といっしょに毛虫が笑っています。続いて小鳥の場面でも毛虫が登場。その次の「おはながあはは」では、ひまわりの他にてんとう虫とハチも笑っています。子犬と笑ってるのはチョウチョ。子どもたちは文字にない絵のことばも読んでいきます。そして真ん中の見開きのページの「みんなあはは」では、今までの全員が集合。その上に、初めて登場する生き物も笑いながら出てきます。このページだけでもたっぷり絵が読めるでしょう。そのあとも「あはは」が続きますが、男の子だけが、なぜかしかめっ面。「どうしたの」の問いには、いろんな答えが返ってくるのではないでしょうか。でも最後は笑顔で終わります。
以前、本屋さんの児童書売場で、お母さんがベビーカーのあかちゃんにこの絵本を読んであげているシーンに出会ったことがありました。まだ字も読めないあかちゃんが、本の絵をみながら声をあげて笑っていました。
1989年の作品ですから30年が経ちます。前川かずおさんは「ズッコケ三人組」の挿絵でも有名ですが、55歳の若さで亡くなりました。でも「おひさまがあはは」は、いつまでもあかちゃんの人気絵本となるにちがいありません。
文 吉井康文