小西英子さんと言えば『まるくておいしいよ』『おべんとう』『カレーライス』『めんたべよう』など、おいしい絵本が大人気です。この絵本も本物のサンドイッチよりおいしそうに見えて、思わずつばを飲み込んでしまいそうです。これだけ完成度の高い絵を描くのには、それだけの努力が伴うもの。コンセプトは子どもの頃に食べて、カルチャーショックを受けた高級サンドイッチより贅沢なサンドイッチを描くことでした。
小西さんの絵本作りは、材料集めから始まります。まず食パンはコンビニ、近所のパン屋さん、高級食パン店などから取り寄せ、絵本にふさわしいものを選んだそうです。フランス産のチーズを選び、ハムも色彩を考え、具材が彩り豊かな海外製のものをデパ地下で何種類も買い求めたとのこと。
様々の具材の中で、一番苦労したのがレタスだそうです。鮮度が落ちるのが早く、形も複雑で、集中して描き上げるのですが、なかなか納得ができず、7枚も描き直しへとへとになったとか。またレタスは包みを開けて切ってみるまで形がわからないので、何玉も買ってきて、一番形のいいものを選んで描いたという苦労もありました。そのために冷蔵庫はレタスだらけで、いろいろな食べ方で消費したものの、当分レタスはうんざりというエピソードも。
食べ物を描くときには元気な気持ちで机に向かうことを心掛けていると小西さんは言います。エネルギーの素には、それに負けないように自分自身がエネルギッシュでなければと。
そのエネルギーが画面からあふれ、読み手に伝わるのでしょう。「こどものとも年少版」2005年4月号として発表された後、上製本、その4倍もある大型本、ロバート・キャンベルさんの訳による英語版も出版されるほどの人気作品になっています。
文・吉井康文