この絵本は1968年に『おんなじおんなじ』が発表されてから55周年を迎える「ぶうとぴょんのシリーズ」の第3弾として、10年後に出版されました。今から45年前の話です。
まず表紙から不思議です。主人公のぶうとぴょんが後ろ向きなのですから。読者にお尻を向けるなんて失礼な話ですが、タイトルを見ればクイズ形式になっていると、納得できます。その答えは裏表紙にあり、表紙を開いた扉にもあります。1見開き目で問いが、2見開き目で答えという、2場面展開のパターンの繰り返しが続きますが、答えの絵がどこかおかしいのです。例えば「えほんをよんでいる」の場面では、ぴょんは絵本を逆さまに持っています。絵を読むことが得意な子どもたちはすぐに気づきます。このようなひとひねりを入れた絵は、漫画家でもある多田ヒロシさんならではの真骨頂とも言えるでしょう。
この絵本はまだ園の生活に慣れない年少組さんの参加型読み聞かせにピッタリ。最初はもじもじしていた子どももだんだんと声が出てくるようになります。そうなれば読み手と聞き手の掛け合いが楽しく弾むことになります。
また『おんなじおんなじ』でも登場していたかえる2匹が、今回も狂言回しの役割を担っています。このかえるたちがぶうとぴょんを温かく見守っているのです。ちなみにぶうとぴょんの着ているものは『おんなじおんなじ』とすべて同じものです。ぼうしのPはPEACE(平和)のPとのこと。ですからオーバーオールの胸には平和の象徴のハトが描かれているのです。2021年には43年ぶりに新作『ぶうとぴょんのまほうのつえ』が発売されました。そして今年は55周年の記念に『ほんとかなほんとかな』が新装改訂版として復刊されるなど、ますます元気なぶうとぴょんです。
文 吉井康文