
絵本を楽しもう! vol.9

「 おひさまあはは 」
( 前川かずお作 こぐま社 )
なんともインパクトのある表紙が、目を引き付けます。おひさまに顔が描かれ、ピッカピカに光輝きながら、豪快に口を大きく開けて、大笑いしているのですから。「あはは」というより「わっはっは」という笑い声が聞こえてきそうです。
ページをめくっていきましょう。安心してください。最初の「おひさまがあはは」のおひさまは、やさしそうな満面の笑みです。次の「おおきなきがあはは」では、木といっしょに毛虫が笑っています。続いて小鳥の場面でも毛虫が登場。その次の「おはながあはは」では、ひまわりの他にてんとう虫とハチも笑っています。子犬と笑ってるのはチョウチョ。子どもたちは文字にない絵のことばも読んでいきます。そして真ん中の見開きのページの「みんなあはは」では、今までの全員が集合。その上に、初めて登場する生き物も笑いながら出てきます。このページだけでもたっぷり絵が読めるでしょう。そのあとも「あはは」が続きますが、男の子だけが、なぜかしかめっ面。「どうしたの」の問いには、いろんな答えが返ってくるのではないでしょうか。でも最後は笑顔で終わります。
以前、本屋さんの児童書売場で、お母さんがベビーカーのあかちゃんにこの絵本を読んであげているシーンに出会ったことがありました。まだ字も読めないあかちゃんが、本の絵をみながら声をあげて笑っていました。
1989年の作品ですから30年が経ちます。前川かずおさんは「ズッコケ三人組」の挿絵でも有名ですが、55歳の若さで亡くなりました。でも「おひさまがあはは」は、いつまでもあかちゃんの人気絵本となるにちがいありません。
文 吉井康文
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絵本を楽しもう! vol.20
「 ちいさいじどうしゃ 」
90年近くも愛され続けている1934年のアメリカの作品です。日本で翻訳されたのが1971年ですから、50年以上読み継がれていることになります。この絵本が好評を博し、シリーズ化され、今でも9作品が出版され続けています
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絵本を楽しもう! vol.19
「 いたずらこねこ 」
1956年のアメリカの作品で、日本でも1964年に紹介されているので、もう60年も読み継がれています。48ページと絵本としては少々長いですが、裏表紙には読んであげるなら2才から、自分で読むなら小学校初級向きと書いて
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絵本を楽しもう! vol.18
「 いっぱいやさいさん 」
いかにもまどさんらしい文章です。「きゅうりさんは、きゅうりさんなのが うれしいのね。」で始まり、1見開きに一つの野菜が、誇らしげに、喜びにあふれんばかりに紹介されていきます。自分が自分であること、アイデンティティを