
絵本を楽しもう! vol.8

「 ちいさなうさこちゃん 」
( ディック・ブルーナ文/絵 石井桃子訳 福音館書店 )
このオランダ生まれのうさぎは、イギリスの「ピーターラビット」と並んで世界中で最も有名なうさぎと言っても過言ではないでしょう。「ミッフィー」で覚えている人もいるでしょうが、それは英訳した時の名称で、特に意味があるわけではありません。元々オランダ語でうさぎは「コネイン」それにかわいらしいものにつける「チェ」という呼称と合わせた「ナインチェ」はブルーナが作った造語なのです。そのことを知った石井桃子さんが「うさこちゃん」と訳したのでした。1955年以来50か国以上で翻訳、シリーズも数十冊を数えます。
シリーズ最初のこのお話は、受胎告知の形でうさこちゃんの誕生が描かれています。生まれたばかりのうさこちゃんを見にいくのが、羊ではなく、にわとりと牛というのがおもしろいですね。初期の作品では、登場する動物のほとんどすべてが真正面を向いています。この本の表紙はもちろん、最初のタイトルが書かれている扉の左ページのうさこちゃんは、左から右へと歩いていますが、顔は正面です。これではぶつかってしまいます。お父さんの「ふわふわさん」や「ふわおくさん」天使や牛も読者と対峙して目と目が合うように描かれているのです。以前紹介した「かおかおどんなかお」のようにアイコンタクトを60年以上も前からブルーナは意識していました。そしてダイナミックなデザインをはっきりした形で縁取る太い輪郭線と鮮やかな色彩。幼い子どもたちの目を引き付ける要素がちりばめられています。安心した気持ちで絵本の世界に入り込むことができるのです。
残念ながら、ブルーナは昨年亡くなりました。けれどもこのシリーズは、これからも多くの子どもたちに愛され続けていくことでしょう。
文 吉井康文
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絵本を楽しもう! vol.20
「 ちいさいじどうしゃ 」
90年近くも愛され続けている1934年のアメリカの作品です。日本で翻訳されたのが1971年ですから、50年以上読み継がれていることになります。この絵本が好評を博し、シリーズ化され、今でも9作品が出版され続けています
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絵本を楽しもう! vol.19
「 いたずらこねこ 」
1956年のアメリカの作品で、日本でも1964年に紹介されているので、もう60年も読み継がれています。48ページと絵本としては少々長いですが、裏表紙には読んであげるなら2才から、自分で読むなら小学校初級向きと書いて
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絵本を楽しもう! vol.18
「 いっぱいやさいさん 」
いかにもまどさんらしい文章です。「きゅうりさんは、きゅうりさんなのが うれしいのね。」で始まり、1見開きに一つの野菜が、誇らしげに、喜びにあふれんばかりに紹介されていきます。自分が自分であること、アイデンティティを