
絵本を楽しもう! vol.5

「 きんぎょがにげた 」
( 五味太郎作 福音館書店 )
「ハイハイ」を覚えた赤ちゃんは、初めて自分の力で、今までより広い範囲の世界を知ろうと動き回ります。それにおとなが「まてまてまて」と追いかけると、喜んで逃げ出すという遊びにつながっていくのです。よちよち歩きができるようになってからも、逃げ回る遊びは大好きです。つかまえてくれるという安心感が、幼い子どもたちの行動を大胆にさせるのかもしれません。
さて、この「きんぎょがにげた」は、一匹の小さな赤い金魚が金魚鉢から逃げ出す場面から始まります。広い世界に逃げる行為に、まず子どもは共感を覚えるでしょう。そして「どこににげた」と興味を引く見つけるという行為に移行していきます。子どもたちは探して見つけることも大好きです。それは、1987年の「ウォーリーをさがせ!」シリーズ(フレーベル館)や1990年代の「ミッケ!」シリーズ(小学館)の大ヒットからもわかります。「きんぎょがにげた」は「ウォーリーをさがせ!」より10年前の1977年に出版されていますが、他のシリーズとは違って、今でもこの一冊だけで毎年何万もの部数を重版しているのです。
五味太郎氏の鮮やかな色彩とバランスのとれたダイナミックなデザインもこの絵本の魅力です。見開きの右ページの右端に描かれている金魚が、次ページへと誘っているようです。このページをめくりたくなるというのも絵本の大切な要素になっています。
3~4歳になれば、1970年に出版された絵探し絵本の元祖とも言われる「とこちゃんはどこ」(松岡享子作 加古里子絵 福音館書店)もお勧めです。
文 吉井康文
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絵本を楽しもう! vol.20
「 ちいさいじどうしゃ 」
90年近くも愛され続けている1934年のアメリカの作品です。日本で翻訳されたのが1971年ですから、50年以上読み継がれていることになります。この絵本が好評を博し、シリーズ化され、今でも9作品が出版され続けています
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絵本を楽しもう! vol.19
「 いたずらこねこ 」
1956年のアメリカの作品で、日本でも1964年に紹介されているので、もう60年も読み継がれています。48ページと絵本としては少々長いですが、裏表紙には読んであげるなら2才から、自分で読むなら小学校初級向きと書いて
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絵本を楽しもう! vol.18
「 いっぱいやさいさん 」
いかにもまどさんらしい文章です。「きゅうりさんは、きゅうりさんなのが うれしいのね。」で始まり、1見開きに一つの野菜が、誇らしげに、喜びにあふれんばかりに紹介されていきます。自分が自分であること、アイデンティティを